今回は、昨今の経営環境において見過ごすことのできない「ビジネスケアラー」の問題についてお伝えします。
深刻化する「ビジネスケアラー」の実態
「ビジネスケアラー」という言葉をご存知でしょうか。これは、仕事と家族の介護を両立している従業員を指す言葉です。現代の日本において、ビジネスケアラーの増加は避けられない社会問題となっています。
経済産業省の推計によると、このビジネスケアラーは2030年をピークに318万人に達する見込みです。これによる経済損失は約9兆1,792億円にも上ると言われています。この数字が示すように、介護離職問題は個々の課題だけではなく日本経済全体に関わる重大な問題なのです。
厚労省が企業向けガイドラインを発表へ
このような深刻な状況を踏まえ、厚生労働省は介護離職防止のための新たな企業向け指針を発表する予定です。この指針では、企業に対して介護休業や休暇制度、介護保険サービス等について周知を徹底することを求めています。
また、外部の介護の専門家と連携し、介護事業所に提出する書類作成の支援や相談窓口の設置など、具体的な支援体制の構築を促す内容となっています。
企業の現状と課題
人事院の調査によると、介護のための短時間勤務制度を導入している企業は78.4%に上ります。一見高い数字に見えますが、実態はやや異なります。これらの企業の88%以上が、週当たりの短縮時間に上限を設定したり、制度利用期間に制限を設けたりしているのが現状です。
このような制約は、実情に必ずしも即していません。結果として、制度はあっても実効性の面で課題を抱えているケースが少なくありません。
まとめ
多くの企業では、育児・介護休業法に基づく制度を既に整備されていることと思います。しかし、制度の存在が従業員に十分周知されていなかったり、代替要員の確保が困難であったりという問題も、制度の活用を妨げる要因となっています。これらの運用面・実務面での課題に対する対策も必要です。
企業として取り組むべき重要なポイントは、まず既存の制度の見直しと拡充です。現行の利用制限を可能な範囲で緩和し、より柔軟な勤務形態を検討することが求められます。社内報やイントラネットを活用した情報提供の強化や、説明会の実施も効果的です。
介護離職の問題は、生産性や人材確保に直接影響を与える重要な経営課題です。高齢化が進む中、対応は一層重要性を増すことが予想されます。