近年、女性活躍推進法の施行や働き方改革の進展により、女性の活躍の場が広がっています。一方で、結婚・妊娠・出産に関する職場でのトラブルは、依然として発生しているのが現状です。今回は男女雇用機会均等法第9条について、経営者の皆様に改めて確認していただきたい内容をお伝えします。
なぜ今、第9条なのか
昨今の労働力不足を背景に、女性の活躍推進は企業の重要な経営課題となっています。優秀な人材を確保・定着させるためにも、結婚・妊娠・出産というライフイベントを経る場合においても、女性が安心して働き続けられる職場環境の整備は不可欠です。
第9条が定める4つの重要事項
第1に、女性従業員の結婚・妊娠・出産を退職理由として予定する制度や慣行を設けることは禁止されています。いわゆる「結婚退職制度」や「出産退職制度」などは、明確に違法とされます。
第2に、結婚を理由とする解雇は禁止されています。「結婚したから」「結婚を機に」という理由での解雇はいかなる場合も認められません。
第3に、妊娠・出産等を理由とする解雇その他の不利益な取扱いが禁止されています。例えば、妊娠を理由とする降格や、産休取得を理由とする不利益な配置転換なども違法となります。これは、自然なライフイベントを理由とした不利益から女性従業員を保護する重要な規定です。
第4に、妊娠中や産後1年以内の解雇は、事業主が妊娠・出産を理由としない正当な理由を証明できない限り、無効となります。この規定により妊娠・出産期の女性従業員は手厚く保護されています。
実務上の留意点
これらに違反した場合、行政指導の対象となるだけでなく、民事上の損害賠償責任も発生する可能性があります。また、近年ではSNSなどで企業の対応が拡散されるリスクも高まっており、企業イメージへの影響も無視できません。
特に注意が必要なのは、「本人の同意があれば問題ない」という誤った認識です。たとえ本人が同意していても、法律違反となる可能性があります。また「業務上の都合」という理由でも、妊娠・出産を契機とした不利益な取扱いは違法とされる可能性が高いことにも注意が必要です。
まとめ
まずは自社の規定や慣行を見直し、法律に抵触する内容がないか確認することをお勧めします。また、研修等を通じて、適切な対応について周知徹底を図ることも重要です。働き方改革や人材確保の観点からも、女性が安心して働き続けられる職場環境の整備は、企業の持続的な発展に不可欠といえます。