近年、企業における人員削減やリストラなどが社会問題となる中、解雇・雇止めをめぐる裁判が増加しています。
そこで今回は、労働問題を専門とする日本労働弁護団、経営法曹会議ほか、労働問題に詳しい弁護士を対象に行われた調査の結果をもとに解雇・雇止め訴訟の現状と、今後の課題についてお話しいたします。
解雇・雇止め訴訟で何が起きているのか?
復職は難しい現実
解雇が無効とされても、実際に職場復帰できる人は意外と少ないという事実です。
- 復職した 37.4%(うち復職後継続就業 30.3%、復職後不本意退職 7.1%)
- 復職せず 54.5%
- 不明 8.1%
上記の結果を見ると、半数以上の人が職場に戻れていないのです。なぜでしょうか?
最も多かった理由は「復職後の人間関係への懸念」(38.9%)でした。
確かに、一度解雇された職場に戻るのは勇気がいりますよね。
さらに気になるのは、復職してもハラスメントに遭うケースがあることです。不本意退職の最大の理由が「使用者からの嫌がらせ」(16.2%)だったのです。
※使用者とは、企業や雇用主を指します。具体的には、従業員を雇用している会社やその経営者、管理者などの立場にある人々のことです。
なぜ和解案が拒絶されるのか?
解雇訴訟において、裁判所から示された和解案を拒絶するケースも多く、86.5%が和解に至らなかったことが分かりました。
- 従業員側が拒絶:45.0%
- 使用者側が拒絶:21.3%
- 労使双方が拒絶:33.8%
従業員側の主な拒絶理由
- 「合意退職の和解案だったが、従業員が復職を希望」(34.7%)
- 「合意退職の和解案だったが、解決金額が低かった」(30.6%)
- 「合意退職の和解案だったが、解雇無効を確信」(22.3%)
使用者側の主な拒絶理由
- 「合意退職の和解案だったが、使用者が金銭支払を希望せず」(19.4%)
- 「地位確認の和解案だったが、使用者が復職を希望せず」(15.3%)
- 「合意退職の和解案だったが、解決金額が高かった」(13.9%)
これらの数字から見えてくるのは、労使の思惑の違いです。従業員は職場復帰や正当な補償を求め、使用者は金銭的負担を避けることや人事権を有利に行使することを重視しています。
解雇・雇止め問題の課題
現在、厚生労働省の労働政策審議会では、解雇無効時の金銭救済制度に関する議論が続いていますが、少し停滞気味のようです。
解雇や雇止めは、単なる金銭的な問題ではなく、職場環境や人間関係など複雑な要素が絡み合っています。そのため、解決には時間がかかることが多いのです。
まとめ
解雇・雇止め問題は、従業員にとっても、企業にとっても、非常に深刻な問題です。
この問題を解決するためには、法的な制度だけでなく、企業の意識改革や、社会全体の理解と協力が不可欠です。
また、解雇問題に直面した際、適切な対応を取るためにも、常に最新の情報を把握しておくことが重要です。