今回は、精神疾患による労災申請についてご説明いたします。
精神疾患を理由とした労災申請は年々増加しており、2022年には仕事の強いストレスなどが原因でうつ病などの精神疾患になったとして、710人もの方が労災認定されたと厚生労働省が発表しています。精神疾患による労災の認定には、以下の3つの申請要件があります。
1.認定基準の対象となる精神障害を発病していること
まず、労災として認定されるためには、特定の精神障害にかかっている必要があります。特定の精神障害とは、世界保健機関(WHO)が作成した「疾病及び関連保健問題の国際統計分類」に基づく「精神及び行動の障害」に分類されるものを指します。ただし、認知症や頭部外傷、アルコールや薬物による障害は対象外となります。
2.業務による強い心理的負荷の存在が認められること
次に、発病前の約6ヶ月間に、業務に起因する強い心理的な負荷があったことが求められます。心理的な負荷の度合いは、「業務による心理的負荷評価表」を用いて評価していきます。
3.業務以外の心理的負荷や個体側要因により発病したとは認められないこと
離婚や家族が死亡したり、また、精神疾患の既往歴やアルコール依存などの個体側要因があったりといった、それら業務外の事由によって精神疾患が引き起こされたとは認められない場合、労災として認定される可能性があります。
このように、精神疾患による労災申請にはいくつかの要件があります。
2023年の9月には厚生労働省が「心理的負荷による精神障害の労災認定基準」を改正し、心理的負荷評価表に「カスタマーハラスメント」や「感染症にかかわる業務」を追加しました。これにより、労災認定件数はさらに増加すると思われますので、今後の動向に注目しておきましょう。