給与支払い方法の新たな選択肢として注目を集めている「賃金のデジタル払い」について、最新の調査結果をもとにご報告いたします。
新時代の幕開け:PayPayによる給与支払いがスタート
2023年8月、キャッシュレス決済サービス「PayPay」が、賃金のデジタル払いの取扱事業者として、厚労省から第1号の指定を受けました。これを受けて、9月にはソフトバンクグループ各社が希望する社員への給与支払いをPayPayで開始。オービック、サカイ引越センター、ニチガスグループなども続々と導入を表明しています。
企業の本音:帝国データバンクの調査から
帝国データバンクが2024年10月に実施した調査(有効回答1,479社)によると、企業の賃金デジタル払いに対する現状の姿勢が明らかになりました。
導入に積極的な企業はわずか3.9%にとどまり、88.8%の企業が「導入予定なし」と回答。この結果は、新制度に対する企業の慎重な姿勢を如実に表しています。
導入のメリット:経営者が感じる期待
導入に前向きな企業が挙げた主なメリットは以下の3点です。
- 第一に「振込手数料の削減」(53.8%)が最も多く、経営コストの削減効果への期待が高いことが分かります。
- 第二に「従業員の満足度向上」(42.3%)が挙げられています。若手社員を中心に、スマートフォンでの即時給与受け取りニーズが高まっていることが背景にあると考えられます。
- 第三に「事務手続きの削減」(32.7%)です。特に日払いや前払いの手続きが簡素化される点に注目が集まっています。
導入への懸念:経営者が感じる不安
一方、導入に消極的な理由として、以下の3点が浮き彫りになりました。
- 最も多かったのは「業務負担の増加」(61.8%)です。デジタル払いと従来の口座振込の二重運用や、労使協定の改定作業などへの懸念が強く表れています。
- 次いで「制度やサービスへの理解不足」(45.0%)が挙げられました。新制度であるため、具体的な運用方法やリスク管理について、十分な情報が行き渡っていない現状が見えます。
- さらに「セキュリティ上のリスク」(43.3%)も大きな懸念事項となっています。
まとめ
現状では導入に慎重な企業が大多数を占めていますが、今後、PayPay以外の事業者の参入による選択肢の拡大やセキュリティ体制の一層の強化、運用ノウハウの蓄積と情報共有などの条件が整えば、普及が加速する可能性があります。
経営者の皆様におかれましては、自社の経営環境や従業員ニーズを見極めながら、導入の是非をご検討ください。