昨今の物価高を受け、従業員の処遇改善は経営者の皆様にとって重要な課題となっています。今回は、厚生労働省が実施した最新の賃金実態調査についてご報告いたします。
画期的な賃上げ実施率
2024年7月から8月にかけて実施された今回の調査は、従業員100人以上の民間企業1,783社から回答を得ました。その結果、実に91.2%(前年89.1%)の企業が賃上げを実施または予定していることが判明しました。これは全ての企業規模において9割を超える画期的な結果となっています。
また、賃金改定を実施しないと回答した企業は2.3%(前年5.4%)、未定と回答した企業は6.4%(前年5.3%)となっており、賃上げに消極的な企業が大幅に減少していることも特徴的です。
具体的な改定状況は、1人当たりの平均賃上げ額は11,961円で、前年と比べて2,524円の増加となりました。また、平均改定率は4.1%と、前年の3.2%から0.9ポイントの上昇を示しています。
労働組合の影響力
今回の調査で特に注目すべき点は、労働組合の有無による賃上げ状況の違いです。
労働組合が存在する企業では、平均賃上げ額が13,668円(前年10,650円)、改定率は4.5%(前年3.4%)となっています。
一方、労働組合がない企業では、平均賃上げ額は10,170円(前年8,302円)、改定率は3.6%(前年3.1%)にとどまりました。
この結果から、労働組合の存在が賃金交渉において大きな影響力を持っていることが読み取れます。また、前年と比較すると労働組合の有無にかかわらず、賃上げ額・改定率ともに増加傾向にあることも分かります。
定期昇給の実施状況
定期昇給についても、実施企業の割合が着実に増加しています。
管理職については76.8%の企業が定期昇給を実施または予定しており、これは前年と比べて5.0ポイントの増加となっています。未実施は4.3%で、前年の5.0%から減少しました。
一般職においては、さらに高い実施率を示しており、83.4%の企業が定期昇給を実施または予定しています。これは前年比で3.9ポイントの増加です。未実施は2.6%にとどまり、前年の3.7%から1.1ポイント減少しました。
まとめ
上記の調査結果から、多くの企業が従業員の処遇改善に積極的に取り組んでいることが明確になりました。特に賃上げ率が前年を大きく上回っている点は、企業の前向きな姿勢の表れといえるでしょう。
しかし、企業規模や労働組合の有無によって、賃上げの実態に差が生じていることも事実です。自社の賃金水準が業界内で適切な位置にあるかどうか、今一度見直しを行っていきましょう。