厚生労働省は6月25日、「令和6年度 過労死等の労災補償状況」を公表しました。過労死や業務上の強いストレスによる精神障害での労災補償の請求件数は4,810件となり、前年度から212件増加し過去最多となりました。実際に労災認定された件数も1,304件と、こちらも過去最多を更新しています。
精神障害による労災認定が初の1,000人超え
労災として認定された精神障害の件数は1,055人で、前年度より172人増加。うち自殺または自殺未遂は88人にのぼり、前年から9人の増加です。精神障害による労災認定は6年連続で過去最多を記録しており、ついに1,000人を超える深刻な状況となっています。
カスタマーハラスメントが急増、セクハラを上回る
労災の原因で最も多かったのは「上司等からのパワーハラスメント」で224件、次いで「仕事内容・仕事量の大きな変化」が119件、そして「顧客等からの著しい迷惑行為(カスハラ)」が108件でした。カスハラは、昨年度から新たに追加された項目で、今回初めてセクハラ(105件)を上回り、3番目に多い原因となりました。
企業にカスハラ対策の義務化
2025年6月に改正労働施策総合推進法が成立し、カスハラ防止対策が企業に義務付けられました。これに違反した場合、報告徴求命令、指導や勧告、公表といった行政措置の対象となる可能性があります。労働者が1人でもいれば「事業主」とみなされますので、未対応の事業者は施行日までに早急な準備が必要です。
まとめ
過労死や精神障害に関する労災認定件数は年々増加傾向にあり、特にカスハラは急速に拡大しています。今後は精神的ストレスに起因するトラブルへの対策が企業に求められ、法的義務も明確化されています。事業主として、従業員のメンタルヘルスと職場環境の整備に真剣に取り組むことが、今後ますます重要になります。