厚生年金保険や健康保険の保険料・給付額の計算基準となる「標準報酬月額」について、現在の上限である月額65万円(32等級)が、段階的に引き上げられることになったのをご存じでしょうか?
改正の背景と導入の目的
背景には、高所得者の実態と制度の不整合がありました。実際には65万円を超える報酬を得ているにもかかわらず、それ以上の分には保険料がかからず、将来の年金額もその分反映されないという仕組みが課題とされてきました。今回の改正により、負担能力に応じた保険料負担と年金給付のバランスが見直されることになります。
段階的な引き上げスケジュール
標準報酬月額の上限は、次のスケジュールで段階的に引き上げられる予定です。
- 令和9年9月~:68万円へ引き上げ
- 令和10年9月~:71万円へ引き上げ
- 令和11年9月~:75万円へ引き上げ
また、今後は「最高等級の者が被保険者全体に占める割合」に基づいて、上限の見直しが可能になる新ルールも導入されます。
改正による影響
新たに上限を超える報酬に該当する方については、保険料の負担が増える一方、将来受け取れる年金額も増加する見込みです。さらに、制度全体の財政健全化が期待され、結果として多くの加入者の給付水準の底上げにもつながる可能性があります。
まとめ
今回の「標準報酬月額」の上限引き上げは、高所得者の実態に合わせた制度見直しであり、保険料と給付のバランスを適正化するものです。今後、段階的に引き上げが予定されていますので、該当する可能性のある従業員がいる企業では、早めに制度の内容を把握し、周知を行うことが大切です。